十和田市現代美術館
十和田市現代美術館
美術館のコンセプトはこうだ。
十和田市現代美術館は「アートを通した新しい体験を提供する開かれた施設」として、Arts Towada計画の中核となる施設です。
入口の馬のオブジェは常設展示作品のひとつで、近付いて見るととても大きい。美術館の面する官庁街通りは、戦前、旧陸軍軍馬補充部が設置されていたことから、「駒街道」という愛称で市民に親しまれているという。そうした十和田市の馬との関わりや、通りを四季折々に彩る花々の存在、そして十和田市の本来の繁盛を象徴する作品が、最初に出迎えてくれる。
館内展示は写真撮影不可だが、最初の展示室に足を踏み入れた瞬間、高さ4メートル近くある巨大なおばあちゃんに遭遇するなど、全体的に作品のスケールがとても大きく、なかにはよじ登れたりするような作品もあり、かしこまって美術を見る感じではなく、全身で体験し、自然に現代美術を楽しむことのできる美術館だ。
Arts Towada計画
ところで、コンセプトにある「Arts Towada計画」とは、なんだろう?
美術館の周辺は、屋外空間を舞台に、通り全体をひとつの美術館に見立て、多様なアート作品が展開されている。
これがArts Towada計画で、美術館の周辺には自由に出入りできるアート広場があり、入館しなくても日常的にそこが現代アートの街になっている、世界でもまれな取り組みだ。
近寄って触れたり写真を撮ったりすることもできる。たとえば遠景の家や車と比べるとずいぶん巨大に見える上の作品だが・・・
これ実は、草間彌生の作品で《愛はとこしえ十和田でうたう》。2017年に国立新美術館で大々的な展示のあった希代の天才美術家といわれる彼女の作品群を考えると、このかわいらしいさは意外なほどかもしれない。
こんな風に、ものすごい巨匠クラスの作家の作品が、極めて親しみやすく存在しているのが街をとても魅力的にしている。
アート広場の作品たち
ほかにもいろいろな作品が並んでいる。インゲス・イデー (ドイツ)の彫刻作品の一つは、トイレの横を楽しそうに浮遊する巨大な《ゴースト》。もう一つは、トイレの大きな窓に垂れて、建物の中を覗いている《アンノウン・マス》
アートと遊ぶ
いくつかある屋外展示の中で筆者のお気に入りは、美術館そばの常設作品、京都のアーティスト椿昇の作品《ハキリアリ》。
2001年の「横浜トリエンナーレ2001」では、全長55メートルの巨大なバッタのバルーンをホテルの壁面に出現させた椿昇は、ここでは、コスタリカの熱帯雨林に生息し、森の木の葉を切り出し、菌床をつくってコノコを栽培し、それを食する農耕アリを巨大化した。
街なかにはほかにも、ストリートファニチャーとして座って休憩のできるおしゃれな椅子や枕(!)や雲(?)があったりと、思わず、こんなに楽しい美術館初めて!といいたくなるような、中も外も楽しい十和田市現代美術館でした。