夕張支線南清水沢駅、駅長と最後の一日


2019年3月31日、新夕張から夕張を結ぶ石勝線の夕張支線が廃線になった。南清水沢駅での最後の一日。

南清水沢駅の名物女性駅長

3月31日、新夕張から夕張を結ぶ夕張支線が廃線になった。
全長、16.1km。駅は6つ。

新夕張は残るので、廃駅は5駅

その日、夕張に向かった。

朝のうちの乗車率は、立っている人がすこしいる程度

車窓には、まだ雪が残る。

この人に会うために。

南清水沢駅「駅長」、村上美知子さん

駅長といってもJRの職員ではない。簡易委託といわれる形態で、町の人が切符の販売のみを簡易的におこなっていた。
ここで16年間「駅長」を務めた人だ。

これまでも何回か言葉を交わしたことがあったが、その人柄をどういえばいいだろう。
太陽のような、というといいすぎかもしれないが、おっかさんといった感じの、地に着いた笑顔と、自由でユニークな気遣いを見せる人だ。

南清水沢駅に到着

10時17分のJRで駅に着いた。

手づくりの横断幕を持参した乗客

沿線にはためく終わりを告げる旗

駅長は駅を留守にしており、切符売り場には男性が座っていた。
それでも、最終日を見守るファンたちは、今日の日付の切符を買いに、ひっきりなしに訪れていた。

途切れることのない行列

10時50分、夕張駅から帰ってきた村上駅長が現れる。

中央右が村上駅長

「もうすごい人!夕張駅、地獄ね・・・。ここは天国!」
そんな名言をさらりと量産する駅長。

南清水沢駅の最後の日を見守る報道陣も何社かいた。

切符を買う列に並んで、購入。今日の記念にサインを頼んだ。

気軽に応じてくれた

お菓子は、南清水沢駅名物。切符を買うと、もらえたり、もらえなかったりする。今日は駅にいるだけでもらえた。

うまい棒、女の人からどうぞ、といただいた

最終日に、多くのファンたちが乗る列車、駅の発着を見守るための、手作りのうちわ。

みんなで持って列車をお出迎え

数日前からファンの人に声をかけて、最終日仮装する仲間を募っていたという。衣装は全部彼女の自前で、テーマは、若干謎だが、昭和風とか漁師風とか、

カールおじさん風とか…?(左から3人目)

そんな「名物駅長で有名な駅」

「うちわ、持っていって!!」

乗客に手渡す

冬は駅のストーブで、ぽかぽか。

「炎のダルマストーブもう1度」

「さようなら私の駅」と書かれたうちわ(右)


「1枚だけ私の駅って書いちゃったの。16年も駅長やってるんだもの、いいでしょう」

仲間はひとり、またひとりと増えて

そうこうしていると私も仲間に入れていただき

一番右が筆者

次の列車がやってくる。

線路、安全祈願

「あなたお酒飲める?」と駅長にきかれてうなずくと、
「最後まで無事に走ってほしいからレールにお酒かけましょう」

レールの飲酒運転だ・・・

最後の一日なのだけれど、思い出すのは笑顔ばかり。村上さん以外はみんな今日初めて会った人たち。
駅と、彼女がつないだ、縁。


旅立つ時間が訪れて、駅を去る仲間は、涙していたけれど

駅長は笑顔を送り、握手を交わし

列車に手を振る「あの子はね、おかあさん亡くしたばかりで、でも今日来てくれたの」

旅の中の出会いって、手を振って別れること。

「私は列車はお母さんの胎内だと思う。
汽笛が鳴って、カタンカタン、って。
だから眠くなるの。
バスだとこうはいかないでしょう?」

踏切の音は子守唄

16年間、いろいろな人との出会いがあった。
人だけでなく「またたきもしないで駅で、鹿と喧嘩した日もあったわね」
飼っていたチャボたちを、駅に連れてきていた日々もあった。

「列車がくるとね、『白線のうしろにさがってください。この駅には白線ないけど』っていうの。そうすると、みんな笑うの」

そして最終運行

最終列車は南清水沢駅で見送ろうと決めていたが、途中、南清水沢をすこし抜けて夕張駅でのセレモニーに寄った。

夕張駅のセレモニー


廃線判断に関わったであろう人たちに、他意なくカメラが向けられる。

日が落ちて、もうすぐ最終列車。
そんなころに、廃線をきめた元夕張市長の鈴木氏の、北海道知事立候補の選挙カーが、線路と平行する道路上で、名前を告げながら走っていった。

平和すぎる時代だ。何もこんな時間に。
やるせない思いを抱えた人だって、今日ここに、たくさんたくさん訪れているのだろうに。

出会った人たちにはただ感謝ばかりだけれど。ただ「ありがとう」だけでは、JR北海道の支線の廃線は、今後も止められらないだろう。
これから、何ができるだろう、何をすればいいだろう。


つくるのが間に合わなかったうちわ「この駅を支えてくれたのはJRじゃないの、マニアの人たちよ」


19時43分、すべての列車の運行を終えた。





今日村上駅長さんをささえて切符売り場にたっていた甥っ子(?)さんが、最後の感謝をこめてお酒をレールにそそぐ。

「新夕張から、僕一人でも乗せてきてくれた日もありました。ありがとう・・・」


21時半すぎ、駅名がおろされ、幕が下りる。


すべての時間が閉じてゆく。

線路は、続く

運行終了後も、切符は今日一日まだ売っていいからと、記念で切符を買う人に、気軽に応じてくれた。

「どんな日付でもいいのよ!16年も駅長やってるんだもの」

明日を、押してもらった。

4月1日

一夜明けた。
まだ雪があって、まだ線路がある。

踏切はもう鳴らないけれど