神様にささげる手回しオルガン
オルガネッタという楽器
オルガネッタは手回しオルガンの一種で、信州・清里の萌木の村で脇田直紀さんという人によってつくられています。
幼少のころより「物づくり」が好きだったという脇田さんは、最初からオルガン職人を目指したというよりは、何か物づくりに関われる仕事を探していて、オルガン工房に弟子入りしたのはいわば偶然だったそう。
「師匠が偶然オルガンの人だったからオルガンを始めただけで、入れてくれるのが別の分野の工房だったならそこにいっていたと思います」
そんな脇田さんなので、実は音楽も苦手だったとのこと。20才のころに紙の穴で自動演奏ができるオルガンがヨーロッパにあるらしいと知り、それなら音楽が苦手な人でも演奏できると、24才のときに一台目の手回しオルガンを制作。
脇田さんの手回しオルガンは、その後オルガネッタと名付けられます。「オペラ」をより楽しく、軽快にしたものを「オペレッタ」と言いますが、これをオルガンに掛けて、「オルガネッタ」と名付けたのだそう。驚くべきは初号機の完成度。現在でもほぼその原形を受け継いだまま作り続けられています。
音色は教会のパイプオルガンをおもわせるようにとても繊細な音でありながら、軽やかな音です。
神様に捧げる楽器
そんな脇田さんに面白い質問をしていた人がいました。
「オルガンの笛はなぜじょじょに短い方(高音)から長い方(低音)にならべないのでしょうか?」
音楽的なところでは、となりあう笛同士が美しい和音になる配列の方が共鳴がここちいいというように言われます。
つまりドレミと笛がならんでいるよりドミソとならんでいる方がいい。
そうならべていくと必然的に左右対称に近い形になります。ここまでは通説として存じていましたが、脇田さんはそのほかに「(教会のパイプオルガンは)神様に捧げる楽器だから」ということをまず説明されていました。なので完璧なデザイン(左右対称)が好まれたと。
そしてさらにヨーロッパの教会などでは、一台のオルガンの中で左右対称なデザインになるだけでなく、空間の中の見た目も左右対称になるように、もしオルガンを右の壁においたら左の壁には音は鳴らないモックのようなものを飾るようなこともあるのだそうです。
「ピアノではここまでしないです」という脇田さんの説明に、あらためてオルガンの奥深さを知りました。
寄稿
寄稿:紀あさ(てまわしオルガンKINO)
http://temawashi.org